不眠症に漢方ができること

気持ちよく眠るということが大事

「不眠症」とひとくくりにされますが、
その症状は人それぞれ異なっており、
また、同じ人であってもその日によって眠れる具合は変わってきます。

なので、一律に『睡眠薬を飲めば解決!』とさせてはいけないと思います。
一般的に睡眠薬で心配されるのは副作用です。
しかし、それ以上に問題なのが「気持ちよく眠れていない」ことです。

人の身体は眠っている時も仕事をしています。
きちんと眠った状態を作ってあげないと眠っている間の仕事ができません。
眠っている間の仕事でとくに大事なのが記憶の整理です。
この仕事が出来ないと健忘や認知症へとつながってしまいます。

とりあえず睡眠薬で眠るというのは健康ではありません。
漢方は健康にするのが仕事です。
漢方でしっかり原因を解決して、気持ちよく眠って健康になっていただきたいと思います。

漢方で不眠症をどのようにとらえるか。

不眠にも必ず原因があります。

一般的には不眠症を「入眠障害」・「中途覚醒」・「早朝覚醒」・「熟眠障害」とわけますが、私は不眠の原因を大きく2つに分けます。

・心の問題
・身体の問題

このように分けるのは、
”どのように眠れないのか” よりも ”どうして眠れないか”を考えるほうが解決の近道だと考えるからです。

さらに、まずはどう改善したいのかです。
頭を休めたいのか、体を休めたいのか
不眠には必ず主となる原因があります。
そちらを解決すればおのずと他方も解決されます。

心の問題

現代は情報化社会です。
とにかくいろんな情報に感情が刺激されています。
この刺激された「感情」が不眠と大きく関係しています。

人の感情は臓器から生まれます。

「えっ、脳で考えてるんじゃないの?」
と思われるかもしれませんが、
脳は各臓器から生まれた感情を取りまとめているだけです。

そもそも眠るとは

漢方で眠るとは、
「気」を体の中に納めた状態にするとされています。

解説

「気」が中に??
とてもわかりにくい表現だと思いますが、
これは現代医学でいう副交感神経を優位にするイメージです。
体の内側の仕事を主にすることです。

膨らんだ感情が「気」が中に入るのを邪魔する

人の感情は大きく5つに分けられます。

「恐怖」「怒り」「喜び」「悲しみ」「思慮」

5つの感情はそれぞれに影響しあってバランスを保っています。

ここで、ある感情が異常に膨らんだとします。

例えば

会社や学校でつねに「怒られないように」「失敗しないように」とびくびくした状態にある
⇒「恐怖」が大きくなると、「腎」の機能が低下してしまう。
⇒同時に「心」の働きが大きくなり動悸を起こしてしまう。
などなど

膨らんだ感情が不眠を起こすメカニズム

感情は臓器と密接に結びついています。
ある感情が大きくなってしまうと、それに関係する臓器や体質的に弱い臓器の働きが低下したり、過剰になったりします。
臓器の働きが低下したり、過剰になったりすると眠る時にその臓器に「気」が入っていけなくなり眠ることが出来なくなるのです。

これは難しい話ではなく、
・心配で眠れない
・怒りが収まらずに眠れない
・問題が多すぎて眠れない
などなど、皆さんも経験があるのではないでしょうか。

一過性の問題であれば、「あ~あ、眠れなかった」で済むのですが、その状況が続いてしまって感情が大きくなりすぎると元に戻らなくなってしまいます。
そうなると「不眠」という状態になってしまうのです。

そういう時に漢方で整えてあげるのです。

心の問題で不眠になる場合、5つの感情がいっぺんにおかしくなることはまずありません。何かひとつ元となった原因があるはずです。
それをどこがどのように悪いのかを手順を追って探っていき、それを整えてあげると眠れないという問題は改善されます。

1
どの感情が膨らんでいるのかを見つけます。

問診や他の身体症状から探っていきます。

2
その結果どこの臓器に影響を及ぼしているのかを探ります。

体質も含め関係する臓器の働きをチェックします。

3
その臓器の働きを正常に戻します。

漢方の「温める」「冷やす」「巡らす」「下す」などの働きを使って体を正常に戻します。

病気はどれもそうですが、一見全体的におかしいように見えますが、ある部分に不都合な箇所があるのです。
それを解決してあげると、体は自分の整える力で正しい状態へと回復させます。

これをいわゆる「免疫力」と言います。

身体の問題

身体が原因の不眠をみる基準は2つです。

「多い」か「少ない」

身体が原因の不眠の治療は過不足を整えてあげることです。
では、何が足りなくて、何が多いのかということですが、
それは エネルギー=熱 です。

身体にエネルギーが多くても少なすぎても不眠となります。

例えば

・冷え性で眠れない ⇒熱が少ない
・歳をとって眠りずらくなった ⇒エネルギーが少ない
・興奮して眠れない ⇒エネルギーが多い
・疲れ切って眠れない ⇒エネルギーが少ない or 熱が多い
などなど

不眠の原因を見るうえで大事なこと

じつは身体に現れた症状は、単純に身体だけの問題だけではなく心の問題の結果現れていることが多々あります。
起こっている症状が単純に身体だけの問題なのか、心の問題が奥に隠れていないかも見ていかないといけません。

自分の不眠の原因を考えてみる

恐怖、恐れが強すぎて不安で眠れない。
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このような場合は、「腎」を補ってあげrます。
腎を補うことで恐怖を吸収できる力をアップします。
代表処方としては「八味地黄丸」です。
その他に腎を補うものとして鹿茸製剤があります。
怒りが大きすぎてイライラして眠れない。
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このような場合は、「肝」を鎮めます。
肝を鎮めることでイライラが治まってきます。
漢方薬としては「柴胡」が入った処方を用います。
柴胡が入った処方は色々あり、体質・症状に応じて最適な処方を選びます。
例.更年期のイライラ⇒加味逍遥散
 とにかくむかつく⇒柴胡加竜骨牡蛎湯 など
うれしいこと(例.結婚式、遠足など)を考えて眠れない。
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このような場合は「心」を鎮めます。
心を落着かせることでドキドキが治まります。
漢方薬としては「苦い」味のものを使います。
体質にもよりますが、黄連解毒湯などで冷却することで落ち着かせます。
解決しなくてはいけない問題が多く思い悩んで眠れない。
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このような場合は「脾」を補います。
脾を補うことで気や血が増えます。漢方薬としては「甘い」味のものを使います。たとえば小建中湯です。
また、脳が過熱している場合は血の熱を冷まします。
悲しみや心配で眠れにない。
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このような場合は「肺」を補います。
肺を補うことで気を発散させます。
漢方薬としては「辛い」味のものを使います。たとえば半夏厚朴湯などを用います。

これらはほんの一例です。
実際、人の体や心は単純ではありません。
もともとの体質もあり、同じ事柄に接した場合でも抱く感情は様々です。

例えば

大切な人が亡くなくなったとします。その時の「悲しみ」の表現としては、

・どうして先に逝くんだ!と怒りで表現する人
・ああすればよかった、こうすればよかったと愚痴が多くなる人
・この先どうしようと不安を口にする人
・ただ、黙って考え込む人
など様々です。

しっかり見極めて、整えるべき箇所をその人の体質に合わせて整えていくことで不眠が改善されます。

例えば

「冷え性」で眠れない場合の原因

  1. 血流が悪いので冷えている
  2. 胃腸が弱くて血の働きが悪くて冷えている
  3. 思い悩むことが大きくて胃腸の働きが落ちて(2)の状態と同じで冷えている
  4. 悲しみが大きく気の流れが悪くて(1)の状態となって冷えている。
  5. 恐怖が大きすぎて腎の機能が低下して温める働きが弱くなって冷えている。
などなど

同じ「冷え」でも原因は様々です。
自分の冷えの原因をしっかり整えてあげることが大切です。

漢方のいいところは、それぞれの原因に対してそれぞれ漢方薬があるということです。
自分の症状の程度に応じても漢方薬を加減することが出来ます。

漢方薬は小さな働きですが、不眠の原因に働きかけますので確実に効いてきます。そして何より治してくれます。

不眠は対処するだけでなく、しっかり治すことで「気持ちよく眠る」ことが出来るようになるのです。